「夜読む日記」
「負けてもいい」
3才の息子がゲームを始めた。
友人の子供がにゃんこ大戦争をするのを見て羨ましがっていたので、ダウンロードしてみたところまんまと夢中になったのだ。
にゃんこ大戦争というのは自分の持っている猫軍団を日本各地にある敵の陣地に突撃させて日本統一を目指すゲームである。
ルールはかなりシンプルなので3才でも私のサポート付きでできてしまうのだが、ステージが進むごとに敵が徐々に強くなっていく。
大人の力を以てしても負けてしまうことがあり、負けるたびに無力な私は「ああ~!悔しい~!」と声に出てしまうのだった。
すると息子が「勝ちだけがいいな」「負けっていけない事?」と言うようになった。
3才でも勝ちや負けがわかって、なおかつできれば負けたくないのだなと驚いた。いや、もしかして私の反応がでかすぎて怯えさせちゃったのかも…?
そんなわけで、息子が一日の中で勝ちや負けについて何度も何度も訊ねてくるので、ともかくそうとう気にしているのだなと思った。
しかし、これは何と答えるのが正解なのだろう…
考えた結果「勝ち負けがあるからゲームは盛り上がるんじゃないか」という答えにたどり着きその旨を息子に話した。
「勝つときもあって、負ける時もあるから面白いんだよ。だから別に負けは悪いことではないんだよ。」
と。ククク…これはかなりいい回答なのではないだろうか。
すると息子は間髪入れずに「どうして負けは悪いことではないの?」と聞いてきた。「やっぱり勝ちたいし負けるのは怖いよ」とのことである。
オーノー…油断していた。息子はイヤイヤ期ならぬなぜなぜ期なのだ。
なにを答えても無限に質問が返ってくる。
また答えを考える。
投げかけられた質問が「なんで空は青いの~?」とかだったら一緒に調べればいい話だが、これは辞書を引いてもググっても答えはどこにも載っていない。
いや…ググればもしかするとなにかしらのアドバイスが書いてあるかもしれないが、しかしこれは親が考えて自分なりの答えを伝えた方がいいような気がした。
きっとどんな答えでも間違いではないが、きちんと一緒に考えてみたいと思った。
●負けって嫌なもの
私は20代までかなり負ける事に怯えていた。
例えば賞レースなどで渾身の作品を発表した結果負けてしまうと、もうこの世の終わりのような気分になりベッドから数日出られないなどザラであった。
あとは勝手に人の仕事と自分の仕事を比較して卑屈になってみたり、ふてくされたり、羨ましくなったり。
この感情が本当に厄介で苦しくてしんどかった。
勝手に勝ち負けにこだわって、勝手に負けた気になって凹んで、どうしていいかわからず、とりあえず数日どん底の気分になる。
負けるのって苦しいし、そのあとの感情の持っていき方ってわからないよなあ。
というか、これって私の勝ち負けに対するマインドが重要な部分からズレてしまっていたのかも。
負け=どうしようもないどん底という考えで止まってしまっていたから苦しかったのかもしれない。
●劣等感は持たなくてもいい
息子はこれからの人生で勝ったり負けたりしていくだろうけれど、負ける事に劣等感を持ってほしくないなと思った。
せっかく生まれてきたんだし、なるべくポジティブで楽しく人生を過ごしてほしいじゃないの。
子供の質問に回答するとき、私はそれを私自身にも言い聞かせている。
役に立つかはわからないけれど、私の経験してきたことを全部ブチ込んだ答えを渡しておいてやりたいなと思うのだ。
そうして私の導き出した答えは「負けるのは悔しいけど、負けることは悲しいことではない。」だった。
なんで?と言われてまた答える。
ウーン、なんでなのかしら…?
しばらく考えたけれど今度は 「考えて、また挑んで、それでも負けて悔しいと思えるなら、 次どうすればいいかを考えればいい。 」
という旨をかみ砕いて答えた。
またなんで?と問われたので「負けたら終わりじゃなくて、 どうすればいいのかをまた考えて自分が納得するまで何度でも挑むといい。 」
そこまで答えてハッとした。
●負け=終わりではない
そうだよな。一度負けたって終わりなわけではないのだ。
時間がある限り何度だって挑戦してもいいし、勝てるまで続けたらいいのだ。
下手でもいいし、周りにどれほど優れている人がいたって卑屈になる必要はない。
負けるのは仕方ない。
ただ負けるだけじゃなくて、次にどうすればいいかを考える。
ゲームでは負けた時に経験値が貰えないかもしれないけど、現実では負けたときの方が経験値をもらえるような気がしている。
そう思うと間違えることも負けることもとても尊く価値のあるものだなと思った。
息子は「なんで~?」としっくり来ていない様子であったが、でも大丈夫だ。
これから何度でも一緒に考えようじゃないか。それで自分なりの答えを見つけたらいい。私たち、いっぱい勝って、いっぱい負けて、でもそれを全部楽しめるようになれたらいいよね。
勝ったり負けたり、一喜一憂しながら色んな答えを見つけていこう。



