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「夜読む日記」

「息子が幼稚園児になった。」

息子は受け取りたての制服を着て、申し込んだバスに乗り込み、幼稚園へ向かって行った。
入園初日、息子は何事もない顔でバスに乗り込み、我々夫婦はかなり拍子抜けした。
幼稚園から帰ってきても何があったか話してくれないし。
でも息子はかなり大人の話を聞くのが好きなタイプなので、まあなんとなく調子よくやっているだろうと思っていた。

しかし登園4日目、初めての懇談で衝撃の事実を知ることとなる。
先生「息子君、一日中ママと会いたいって静かに泣いているんです…」
嘘だろ…
な、泣いている?静かに?あの元気の塊のような男児が…?
あまり想像もつかない上、てっきり元気に登園しているとばかり思っていたものだから、かなり衝撃であった。

脳がグルグル回りだす。
「明日はお休みすべきだろうか…?いや違うな…今ここで休んだら息子の頑張りが水の泡だ…」
「息子はまだ友達ができていないようなので私が友達を作るサポートをするべきでは…いや…それはおかしいか…?」など考えを巡らせ、しかし導き出した答えはどこかすべてずれているように感じた。

これは恐らくこれは親が介入しない方がいい。
息子が自分で選択して、息子が自分で立ち上がらなければならない。
「ママなしでも楽しく過ごすぞ」だったり、「友達なんかいなくても平気だぞ」だったり、「頑張って誰かと仲良くするぞ」だったり、「なるようになるさ」と思えるようになったり…
とにかくその答えは息子にしか導き出せないのである。
ワタクシは無力…見守る事しかできないのだ。
勿論極力サポートをするつもりではいるが、これは親が出しゃばらずに息子の頑張るターンなのかもな…と思った。
しかも初めての大仕事だ。

●私にできる事を考える
とにかく登園した時に息子が自信を持てるようにしてやりたいと思った。
例えば息子はちょっとおしゃれに興味があるので登園前ほんの少しだけ髪にいい匂いのオイルをつけてあげたり、園から「かばんに目印のチャームを一つだけつけていい」と言われているのでぬいぐるみ型のチャームを付けて、息子の味方という設定をつける。
手に小さく元気の出るおまじないのマークを描いてあげる。
私のやっていることが正解なのかは全然わからないが、とにかく私が小さいときに自分を奮い立たせるためにやっていたことを園に迷惑が掛からない範囲で全部試してみた。
私にできる事ってマジでこれぐらいしかない。ああ、親って無力…

●懇談の翌日
色んなおまじないをしたけれど、結局バスに乗るときに息子は耐えきれなくなり初めて泣いてしまった。
一緒のバスの息子のクラスメイトも先に乗ってわんわん泣いていた。
調べてみると、初登園から何日か経つと「登園は一回限りのイベントではない」と理解して泣く子がかなり多いようだ。
私のおまじないは効果があったんだかなかったんだか…
逆効果だったらどうしようか。ああ~わからないことだらけ!
子供は初めての幼稚園だが、私も親として幼稚園児とかかわるのは初めてだ。
全て手探り。
正解か不正解か、はたまた余計なお世話だったかわかるはかなり先の事になるのかも。

●ミチミチフィナンシェ
私にできる事はかなり少ないなあと肩を落としつつ、スーパーでミチミチにパックに詰められたフィナンシェをカゴに入れた。
「帰ってきた息子がゆっくりできるようにせめておやつの一つでもあげちゃおう」
なんて思った。
これはきっと数少ない私にしかできない事だと思うからだ。
それくらいしかできないんじゃなくて、それが今の私の役割なんだと思う。
さあ、あと2時間ぐらいで息子が帰ってくる。
共に手探りで楽しんでいければいいな。おいしいおやつを一緒に食べたりしながら。

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ライター紹介

原田ちあき
イラストレーター・漫画家・京都芸術大学非常勤講師
誰の心の中にもある、鬱屈とした気持ちをカラフルに描く。

国内外問わず展示やイベントを行い、イラストの枠に収まらずコラボカフェ、アパレルデザイン、映画出演、コラムの執筆、コピーライター、バンドへのゲストボーカルなど活動は多岐にわたる。
誰かに喜んでもらえるなら何でもやりたい。

【連載】
「やはり猫にはかなわない」ソニーミュージック es
「原田ちあきの人生劇場」LINE charmmy
「しぶとい女」大和書房

【著書】
「誰にも見つからずに泣いてる君は優しい」大和書房
「おおげんか」シカク出版
「原田ちあきの挙動不審日記」祥伝社 等

【official】https://cchhiiaakkii8.wixsite.com/chiaki
【blog】http://cchhiiaakkii8.blog.jp
【Instagram】cchhiiaakkii9
【X】@cchhiiaakkii
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