「夜読む日記」

どうにもうまくいかない時ってある。
大人になってから「人生って波があるのね～」と実感するタイミングが多々起こるようになった。
大体はどうにも立ち行かなくなった時に実感するのだが、私は今がちょっぴりその時かもしれない。
別に何か深く落ち込む要素があったわけでも、誰かに意地悪されたわけでも、鬱々としているわけでもない。
ただ、ぼーっとしてしまうことが多く、仕事でミスをしまくっている。春だからだろうか。
いや、元々ぼーっとしているのでミスはしてしまいがちなのだが、今月はその割合が非常に多く、各仕事先にやんわりと少しずつ迷惑をかけている。

このコラムだって本来は15日には書き上げる予定で動いていたのだが、今がもう19日。
別にさぼっていたわけでも忘れていたわけでもない。
月初めから何を書くのかを迷い続け、書いては納得がいかず自らボツにして…を3回ほど繰り返している。
結果「もう今回は何もうまくいっていないぞ！」ということを書いてしまおうと決意した。

先述した通り、私は大変なうっかりものなので、よくミスをする。
約10年前、右も左も、イラストのデータ制作さえわからないままラッキーパワーのみでイラストレーターの仕事を始めた私は、それはもうミスしてミスしてミスしまくった。
これはあまりにも馬鹿すぎる話なのだが、イラストに「サイズ」があることを知らず、小さなイラストの納品をバカでかいサイズで制作し自信満々に提出し、依頼主さんを困惑させてしまったり、まだ発表前のデータをSNSで発表してしまったりなど、今考えても「マジで私はどうなっているんだ…？」という迷惑を人にたくさんかけてきた。

誰かに迷惑をかけるたびに「人生もうおしまいだ」と一丁前にも深く落ち込む。
あ～！人に迷惑をかけて生きてるの、この世で私だけみたい！！
他の皆はこんなバカな失敗しないんだろうな～、なんで私ってこんなにも馬鹿なんだろう！嫌になっちゃう！
そんな絶望を繰り返し繰り返し、10年経つ。
致命的で初歩的なミスはもうほとんどしなくなったが、いまだにミスはするし、人に迷惑もかける。ゾッとする間違いもしたりするが、どんなに間違えたりしても案外人生は終わりにはならなかった。

私はミスをするたび、イラストレーターになる前に働いていたコールセンターで先輩に教えてもらった言葉を思い出す。
私が働いていたのは携帯電話会社のコールセンターで、電話をかけてきた人の困りごとを解決していくという業務を担っていた。
携帯電話でできることが沢山ある分、覚えることも際限なくあり、イレギュラーな電話や自分の知らない内容の電話もたくさん受けた。
私はそのたびに毎回テンパり散らかしていた。だって知らないことなんてできるわけないじゃ～ん！！え～ん！
そんな日が続いていたある日、先輩が私の隣にやってきて「仕事ってRPGなんだよ」と教えてくれた。
　何事も始めたての頃は初期装備で、使える魔法も限られている。
　でも、電話を1本こなして、失敗したり知識のある人に解決方法を教えてもらうとできることが1つ増える。
　人生っていうのはそれを繰り返し続けるんだよ。

生きていると、どうにもこうにもうまくやれないタイミングがある。
上手くやっているように見えるあの人や、あの子だってきっとそうだ。
失敗をしたからって人生が終わるわけではない。絶望する必要もない。
ただただうまくできるようになるまで失敗して失敗して失敗しまくる。納得できないなら何度だってやり直してもいい。

のたうち回っている間に、経験値が増えて案外暗いトンネルを抜けていたりもするのかも。
立ち上がった先で私はまたきっと少し賢くなって、図太くなっている。
大丈夫、大丈夫。うまくいかなくたって。
生きていればいつか「あの時に失敗しておいてよかった」と思える日が絶対に来るはずなんだから。
これからも迷惑をかけたり、失敗して痛い目を見ることもあるだろうけど、きっと未来の私も大丈夫だ。