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真魚 八重子「映画でくつろぐ夜」

「映画でくつろぐ夜。」 第60夜

知らずに見ても楽しめるけど、
知ればもっと作品が奥深くなる知識、情報を
映画ライター、真魚八重子が解説。

「実は共通の世界観を持っている異なる作品」
「劇伴に使われた楽曲の歌詞とのリンク、ライトモチーフ」
「知っていたらより楽しめる歴史的背景、当時の世相、人物のモデル」

自分には関係なさそうとスルーしていたあのタイトルが、
実はドンピシャかもと興味を持ったり、
また見返してみたくなるような、そんな楽しみ方を提案します。

■■本日の作品■■
『ゴーストバスターズ』(2016年)
『デンジャラス・バディ』(2013年)

※配信サービスに付随する視聴料・契約が必要となる場合があります。

『女性コメディアンの映画はやっぱり楽しい!』

各国にコメディ映画があって、その歴史や変遷がある。笑いには時代性が重要で、1950年代の恋愛コメディ映画なんかは、自分は正直古臭くて笑えない。

80年代はコメディ女優というのはまだ少なくて、コメディ映画に一般的な女優が出てユーモラスなことをする、という場合が多い。稀な例で、60年代末からコメディドラマが多かったゴールディー・ホーンは、シリアスな映画も出演しているが、コメディ女優といっても違和感はないかもしれない。だがやはり80年代に入っても、一枚看板のコメディ女優というのはなかなか浮かばない。コメディ映画に出ている女優、という域を出ないからだ。

そんな中でもサンドラ・ブロックが『スピード』(94年)で見せた茶目っ気は、コメディ映画の女優のそれだった。真面目な映画や恋愛映画にも出演するので、コメディ女優とはいえないけれども、『デンジャラス・ビューティー』(00年)は女性が主演のコメディとして抜群の出来だった。ミス・ユニバースの女性たちを精神的に解放し、命を助け、みんなで仲間になるという友愛に溢れた映画だった。時々見返すが、本当に良い映画だと思う。個人的に、美という先天的な特技を努力によって鍛えて競うことがいけないというのなら、オリンピックも同様に止めてしまえと思うので、この映画も不快感はない。

00年代以降になると、先鋭化したコメディ女優が登場した。エリザベス・バンクスの場合は女優としても抜群のセンスを持っているし、監督、プロデューサーまで手掛けている。最近の仕事を見ていても、俳優をやりつつも裏方で、女性が中心のコメディをまとめる役割もこなしていることが多い。『ピッチ・パーフェクト』シリーズの製作といえば、わかりやすいだろう。また2019年度版の『チャーリーズ・エンジェル』の監督、脚本、製作のすべてを担当している。そして今月29日から公開の『コカイン・ベア』の製作と監督も彼女だ。誤って麻薬王のコカインを食べてしまった野生の熊の、とんでもない実話に基づく映画である。

『サタデー・ナイト・ライブ』出身の女優の存在も大きい。クリスティン・ウィグはコメディ映画で愛されすぎて、もはや一般映画の重要な役どころを任される女優にまでなった。『ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン』(11年)に主演後、2013年には『LIFE!』『her/世界でひとつの彼女』、2015年に『オデッセイ』と大作にも出演。

『サタデー・ナイト・ライブ』出身では、つい最近もケイト・マッキノンが『バービー』(23年)で子どもに足をもぎ取られたり、頭の毛を剃られたりして、ちょっとおかしくなってしまったバービー役で出演していた。

『ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン』で怪演を見せて以来、コメディ映画からシリアスな作品まで、幅広く出演しているのがメリッサ・マッカーシーだ。コメディでも愛想の良いキャラから不気味なキャラまで演じ分けて、本当に器用な女優である。彼女らが共演した『ゴーストバスターズ』(16年)が不思議なほど嫌われて、まるでなかったかのようにリメイクが作られたのは本当に頭にきた。男性たちがやっていたことをそのまま女性が演じることは、そんなに癇に障るのだろうか。いまだにこの出来事を思い出すと腹立たしい。

 

<オススメの作品>
『ゴーストバスターズ』(2016年)

『ゴーストバスターズ』

監督:ポール・フェイグ
脚本:ケイティ・ディポルド/ポール・フェイグ
出演者:メリッサ・マッカーシー/クリステン・ウィグ/ケイト・マッキノン/レスリー・ジョーンズ/チャールズ・ダンス/マイケル・ケネス・ウィリアムズ/クリス・ヘムズワースセシリー・ストロングアンディ・ガルシアマット・ウォルシュ

『サタデー・ナイト・ライブ』の先輩である、ビル・マーレーたちが演じた大ヒット映画『ゴーストバスターズ』を、近々にSNLでレギュラーだったクリスティン・ウィグやケイト・マッキノン、レスリー・ジョーンズ、そしてメリッサ・マッカーシーも出演した女性版『ゴーストバスターズ』。今からでもいいので、改めて観て面白いことを再確認してほしい。「男前ならバカでもいい」という役柄を、張り切って演じたクリス・ヘムズワースも最高。

『デンジャラス・バディ』(2013年)

『デンジャラス・バディ』

監督:ポール・フェイグ
脚本:ケイティ・ディポルド
出演者:サンドラ・ブロック/メリッサ・マッカーシー/マーロン・ウェイアンズ/マイケル・ラパポート/ジェーン・カーティン/タラン・キラム

サンドラ・ブロックとメリッサ・マッカーシーがタッグを組んだ女刑事物。これは本当に傑作なので観てほしい! サンドラはFBIだが堅物で空気が読めず、同僚からも敬遠されている。メリッサは地元育ちの荒くれデカ。ボストンでの事件解決のため、地元の刑事メリッサとサンドラが共同作業をするが、最初は犬猿の仲となる。しかしじつは互いに優秀なことがわかるようになり、また武器オタクなことで息も合って一気に共闘していく。監督はこれらの女性映画での重要人物であるポール・フェイグ。

※配信サービスに付随する視聴料・契約が必要となる場合があります。

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ライター紹介

真魚 八重子
映画ライター
映画評論家。朝日新聞やぴあ、『週刊文春CINEMA!』などで映画に関する原稿を中心に執筆。
著書に『映画系女子がゆく!』(青弓社)、『血とエロスはいとこ同士 エモーショナル・ムーヴィ宣言』(Pヴァイン)等がある。2022年11月2日には初エッセイ『心の壊し方日記』(左右社)が発売。
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