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真魚 八重子「映画でくつろぐ夜」

「映画でくつろぐ夜。」 第27夜

知らずに見ても楽しめるけど、
知ればもっと作品が奥深くなる知識、情報を
映画ライター、真魚八重子が解説。

「実は共通の世界観を持っている異なる作品」
「劇伴に使われた楽曲の歌詞とのリンク、ライトモチーフ」
「知っていたらより楽しめる歴史的背景、当時の世相、人物のモデル」

自分には関係なさそうとスルーしていたあのタイトルが、
実はドンピシャかもと興味を持ったり、
また見返してみたくなるような、そんな楽しみ方を提案します。

■■本日の作品■■
『バスキア』(1996年)
『メン・イン・ブラック3』(2012年)

※配信サービスに付随する視聴料・契約が必要となる場合があります。

アンディ・ウォーホルを演じた俳優たち

 前回取りあげたイヴ・サン=ローランの劇映画2作で、どちらにも交流のあった有名人として登場したのがアンディ・ウォーホルだった。二人とも、私生活では毎晩のようにナイトクラブで過ごし、ヒップな若者に関心を持っていた点でも共通していた。サン=ローランとウォーホルが一緒に写る写真は何枚も残されているが、有名人が居合わせたといった雰囲気ではなく、楽し気に歓談していたり、ナイトクラブという場に似合わず話し込んでいたりと、親密さが漂ってくる。

 ウォーホルはイヴ・サン=ローランの肖像画のシルクスクリーン作品も手掛けている。『サンローラン』で晩年のイヴ・サン=ローランを演じたヘルムート・バーガーの背後に、このサン=ローランの巨大な色違いの4枚の肖像画が飾られていたのが、とても印象的だった。現在、このサンローランの肖像画は、2017年に開館したパリのイヴ・サンローラン美術館に展示されている。

 アンディ・ウォーホルは常に時代の最先端を走っていた。ポップアートの旗手であり、音楽のプロデュースも手掛け、映画製作も行った。ウォーホルは表層的にシュールな言動や振る舞いをして、自分自身も作品のひとつのようにしていた節がある。そのため、彼の佇まいを第三者が演じると、ことさら奇をてらったような挙動が目立つ。

 オリバー・ストーン監督による『ドアーズ』では、クリスピン・グローヴァーがアンディ・ウォーホルを演じていた。パーティでジム・モリソンがウォーホルに紹介されるのだが、取り巻きだけが愛想笑いをするウォーホルのわざとらしい不思議な言動は、いかにも軽薄なアーティストに見える。クリスピン・グローヴァーは『バック・トゥ・ザ・フューチャー』で父親のジョージを演じた俳優だが、非常に変わり者として知られている。現在は「ハリウッド映画には出ない」と宣言して、ひとりで自主製作映画を作り続けている。

 そして一番印象的だったのは、『バスキア』でデヴィッド・ボウイが演じたウォーホルだろう。ボウイもウォーホルと同時代を生きたスーパースターであるのに、その彼がウォーホルを演じるというのは、倒錯しているような意表の突き方があった。ボウイの演じるウォーホルは、弱弱しくてチャーミングなところもいい。『バスキア』はキャスティングが抜群な映画で、実際にウォーホルと交流のあったデニス・ホッパーも出演している。
 ホッパーは現代アートのコレクターとしても有名だ。彼はウォーホルによる毛沢東のスクリーントーンの肖像画を所有していたが、嵐の夜に、本物の毛沢東と見間違えて気味が悪くなり銃弾を撃ち込んだ。ホッパーが麻薬に耽溺していた時期の出来事なので、いかにも彼らしい逸話だ。ホッパーは後日この絵をウォーホルに見せ、ウォーホルが新たな描きこみもして二人の共作ということになった。この絵はホッパーの没後、2011年に2500万円という高額で落札されたことも話題になった。

 他にもあまり作品自体の評価は高くないが、『ファクトリー・ガール』ではガイ・ピアーズがウォーホルを演じている。また、ウォーホルは68年にラディカルフェミニストで作家、劇作家であったヴァレリー・ソラナスに撃たれ、重傷を負う事件が起きた。そのソラナスの半生を映画化した『I SHOT ANDY WARHOL』では、ジャレッド・ハリスがウォーホルを演じている。本作でソラナスを演じたリリ・テイラーの飾り気がない外見には、それゆえにむき出しの激しさがヒリヒリとあふれていた。最近ではWEB上でもフェミニズムが色々と話題になる中で、ソラナスの物騒なタイトルの著書「男性皆殺し協会」も極端な例として注目を集めている。

<オススメの作品>
『バスキア』(1996年)

『バスキア』

監督:ジュリアン・シュナーベル
出演者:ジェフリー・ライト/クレア・フォーラニ/マイケル・ウィンコット/デヴィッド・ボウイ/デニス・ホッパー/ゲイリー・オールドマン/ベニチオ・デル・トロ/コートニー・ラヴ

 この映画でジャン=ミシェル・バスキアは、ストリートで自分の絵のポストカードを売っているときに、リムジンから降りてきたウォーホルと出会う。一見格差を感じさせるが、ウォーホルがバスキアの作品に関心を示すことで、この演出がチャーミングな展開になっていくのが、本作の愛すべき点だろう。バスキアは急速に画家として成功を収めていく中で、貪欲な美術商との関係に疲れ、有名になりすぎたことで不安定になっていく。そんな中でウォーホルがバスキアの良き友人であり、何気ない話し相手であった姿が描かれる。

『メン・イン・ブラック3』(12年)

『メン・イン・ブラック3』

監督:バリー・ソネンフェルド
脚本:イータン・コーエン
出演者:ウィル・スミス/トミー・リー・ジョーンズ/ジョシュ・ブローリン/ジェマイン・クレメント/エマ・トンプソン/マイケル・スタールバーグ/マイク・コルター/ニコール・シャージンガー/マイケル・チャーナス/ビル・ヘイダー

 本作でウォーホルを演じたのはビル・ヘイダーだ。最近のヘイダーはマルチな才能を発揮し、監督、脚本、製作、主演をこなすドラマ『バリー』で非常に高い評価を得ている。しかしまだ12年の本作の頃は、コメディ俳優として助演が多かった。この映画でも出番はわずかだが、ウォーホルのアトリエ兼取り巻きのたまり場だったファクトリーの様子が、戯画化され楽しく描写されている。この映画ではなぜウォーホルがあんなに奇をてらった振る舞いをしていたか、意外な理由が与えられていて笑ってしまう。

※配信サービスに付随する視聴料・契約が必要となる場合があります。

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ライター紹介

真魚 八重子
映画ライター
映画著述業。『映画秘宝』や『キネマ旬報』などで映画に関する原稿を中心に執筆。
共著に『鮮烈!アナーキー日本映画史1959~1979』(洋泉社)、
『日本映画は生きている 監督と俳優の美学』(岩波書店)、『戦う女たち』
(作品社)などがある。
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