「映画でくつろぐ夜。」 第120夜
知らずに見ても楽しめるけど、
知ればもっと作品が奥深くなる知識、情報を
映画ライター、真魚八重子が解説。
「実は共通の世界観を持っている異なる作品」
「劇伴に使われた楽曲の歌詞とのリンク、ライトモチーフ」
「知っていたらより楽しめる歴史的背景、当時の世相、人物のモデル」
自分には関係なさそうとスルーしていたあのタイトルが、
実はドンピシャかもと興味を持ったり、
また見返してみたくなるような、そんな楽しみ方を提案します。
■■本日の作品■■
『ナイン・ソウルズ』(03年)
『この動画は再生できません THE MOVIE』(24年)
※配信サービスに付随する視聴料・契約が必要となる場合があります。
お笑い芸人と映画
昔からお笑い番組は好きでよく観ていた。時期によっては他の趣味に夢中になって、離れている期間もあったけれど、ここ数年はまた観るようになっていた。母の介護をしている間に、「キエェェーッ!!」と叫びたいくらいストレスが溜まったので、またお笑い番組を観てガス抜きをするようになったのだ。それから癖になっていまだに観る機会が多い。
お笑いの後腐れのなさがいいので、ドラマは観る習慣がない。映画を観るのに時間を取られるから、何時間もかかるドラマは諦めてしまった。たとえば映画規模のNetflix制作ドラマなどは興味を引かれるところだが、今のところ見逃してしまっている。今回、お笑い芸人が出ている映画を取り上げようと思うが、不勉強なためドラマは割愛させていただく。
名前だけの出演だが『花束みたいな恋をした』(21年)で、知り合いになった麦(菅田将暉)と絹(有村架純)は偶然、同じ日に二人とも天竺鼠のライブのチケットを買っていたのに、都合が合わず見逃してしまう。この天竺鼠というのがいかにもうまいセレクトだと思った。ちなみに今年に入って天竺鼠は解散し、川原克己は天竺川原に改名している。川原は渋い風貌なので、過去には『この街と私』(19年)などに出演したこともあった。
『ある男』(22年)では小籔千豊が妻夫木聡の同僚弁護士役で出演していた。しかし、エッ!と思うシーンがあった。小藪といえば祖父の代からの家庭のルールで、ベジタリアン(魚貝は食す)であるのは有名なのに、肉まんを食べるシーンがあったのだ。ダミーかな?と思ったが、実際にテストも含めて「551の豚まん」を数回食べたというから、長年の主義も折るほど真摯に取り組んだのだなと感嘆した。確かに緊張感漂う映画の中で、白い肉まんが緩和の効果を生んでいる良いシーンだ。
他にも実際に起こった「東大阪集団暴行殺人事件」を題材にした、井筒和幸監督によるジャルジャル主演の『ヒーローショー』(10年)も印象深い。やはり比率的に漫才師よりコント師の方が芝居は上手だなと思う。また、同じ井筒監督の『ガキ帝国』(81年)では上岡龍太郎の演じるヤクザがとても恐ろしかった。お笑いの人が真面目に演じると迫力を生むのは、北野武監督の『ソナチネ』(93年)で、チャンバラトリオの南方英二が殺し屋を演じた冷徹さと通じるだろう。
他に最近気づいたものをザザッと挙げていくと、長編デビュー作の『メランコリック』(18年)が良かった、田中征爾監督の2作目『死に損なった男』(24年)に空気階段の水川かたまりが主演。『兄を持ち運べるサイズに』(25年)では、男性ブランコの浦井のりひろが納棺師役を務めていた。演技がうまくて俳優業が目立つ、とろサーモンの村田秀亮は『宝島』(25年)で“鼻の曲がった男”というヘンなあだ名のヤクザを演じていた。他にカメオ出演だと髙橋伴明監督の『安楽死特区』に友近が、女漫才師役で出演していた。
ホラーもお笑い芸人が大挙して出ているジャンルである。『劇場版 ほんとうにあった怖い話』シリーズはマユリカ阪本、みなみかわ、真空ジェシカのガク、フースーヤ、9番街レトロ京極など豪勢なメンツ。これで面白いなり、怖いなりすれば良いのだが……。残念ながら予算の少なさが見えてしまう。こういった路線では、かが屋の元々ドラマシリーズから映画版も作られた、『この動画は再生できません』(24年)は比較的面白い。一見心霊現象に思えたものを、現実的に解き明かしていく内容になっている。
これから公開の映画では、5月29日封切の是枝裕和監督『箱の中の羊』(26年)が、千鳥の大悟と綾瀬はるか主演で話題になっている。それから5月15日公開のベニー・サフディ監督作品の『スマッシング・マシーン』(25年)では、光浦靖子が通訳の役で顔出ししていた。そしてちょっと先になるが、7月17日公開の染谷将太主演『チルド』(26年)は、令和ロマンのくるまが助演。『ミーツ・ザ・ワールド』(25年)はカメオ出演でガッカリしたが、本作ではかなり迫力あるシーンを演じているので、ぜひオススメしたい。
<オススメの作品>
『ナイン・ソウルズ』(03年)
『ナイン・ソウルズ』
監督:豊田利晃
出演者:原田芳雄/松田龍平/千原ジュニア/鬼丸/板尾創路/渋川清彦
千原ジュニアは豊田利晃監督作品の常連のイメージがあったが、『ナイン・ソウルズ』から昨年の問題作『次元を超える』の間は、出演していないというのが驚きだった。千原ジュニアと松田龍平は豊田作品のアイコン的イメージだ。少ない本数で、それだけインパクトを残したということだろう。本作は脱獄に成功した囚人9人が逃げ延びようとする姿を描く。
『この動画は再生できません THE MOVIE』(24年)
『この動画は再生できません THE MOVIE』
監督:谷口恒平
出演者:加賀翔/賀屋壮也/和田雅成/世古口凌/平野良/桃月なしこ/アキラ100%
主演はかが屋で、加賀翔が心霊DVDの編集マン、賀屋壮也はオカルトライターのコンビ。諸事情から賀屋が加賀の家に居候している設定。22~23年にテレビ神奈川で放映され、24年には劇場版が公開されたドラマシリーズ。一種の探偵シリーズであり、心霊物を取り扱いながら、後半では加賀による現実的な謎解きが行われる。
※配信サービスに付随する視聴料・契約が必要となる場合があります。


