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「夜読む日記」

一人でなんでも解決しようとするのをやめた話

結婚してからしばらく、家事はほとんど私が一人でやっていた。
夫はとても優しい人ではあるが、とにかく家事のスキルがないというか、家事に興味のない人だった。
家も住めたらいいというタイプで、散らかっていようがきれいにしていようが「サイコウ~!」と喜ぶ。
食べた後の皿はまた必要になった時に洗えばいい…みたいな。

私は完璧とまではいわないが家はできるだけ清潔にしておきたいし、食器類もつぎにすぐ使えるように使用後はすぐに洗ってしまいたい。


「まあこんなに考え方が違うならば仕方ないか…」と諦めて、仕事も家事もぜんぶ自分が担当していた。
そもそも私は人に頼るのが苦手で、夫も私の「大変そうサイン」を察するのが苦手。
結果、私がヘトヘトになり夫に文句を言ってしまう。


●ものは試し
ある日、試しに夫に洗濯物を頼んでみたら、パンツの畳み方を知らなかった。
靴下はねじりん棒、Tシャツは丸太のよう。
「なんでそんな独創的な形になってしまうんだ…!?」
と思いながらも、皿洗いをお願いすれば床がビッチョビチョ。
なぜかシンクの中が滅茶苦茶汚い。この中で何か爆発したのか…?
勿論夫に悪気などは全くない。全力でやって、その結果がこれなのである。
全力でやったことにダメ出しをするのはなんだかヤボな気がして、その時は「やっぱりこれは自分でやった方が早いな~」と思ったのだった。


●何かを頼るってなんて素晴らしいんだ!
しかしコロナ禍妊娠をきっかけに食洗機や乾燥機に頼るようになってから、気持ちが少し変わったのである。
何かを頼るってなんて素晴らしいんだ!自分の時間がこんなに生まれるではないか…!
それに同じ生活空間を共有するのだから、家事ができる人の数が増えた方がいいに決まっている…

頼ることは恥じゃない。人でも機械でも、できるなら助けてもらえばいい
それなら、と腹をくくって、夫にも家事を教えることにした。

夫は苦戦しつつも根気よく付き合ってくれた。
ありがたい話である。


●ありがたいなあ~を忘れていた…ゾッ
そしてその「ありがたいな~」と思っていたことを、すっかり忘れていた。
洗濯もの畳の練習をしたのが2020年ごろだったはずなので5年前ぐらいの出来事だったのであろうか…ゾッ

ある日、私がバタバタしていて、取り込んだ洗濯物をベランダから部屋に放り投げた。
「あとで畳むから!」と心の中で言い訳しながら。
すると夫がそれをヒョイと手元に引き寄せて、当たり前のように畳み始めたのだ。
「え、いいよ、私やるから」と言うと、
「俺にもできるよ」とさらり。
パッパッと見事に畳み上げられた洗濯物を見て、思わず感動した。
そういえばこの人、以前はTシャツを丸太みたいに丸めていた人じゃないの!!!
今や堂々たる“家事スキル持ち”の一員になっている。
すごい。すごすぎる。
しかも、めちゃくちゃ楽じゃないか。


●人に頼ることは恥ではない
気がつけば夫は、いろんな家事をこなせるようになっていた。
「ああ、頼むより自分でやった方が早い」なんて、もう思わない。
人に頼るのは悪いことじゃない。
負けでも、恥でもない。
誰だって最初はできないのが当たり前。
できるようになるには、一緒にやることから始まるんだ。


●自分でやらなきゃを少しづつ卒業する
「全部自分でやらなきゃ」と思っていた頃より、今の方がずっと楽だし、夫との関係もあたたかいものになっているような気がしている。
そして今でも、夫が自然に洗濯物を畳んでいる姿を見ると、ちょっと笑えて、ちょっと感動する。

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ライター紹介

原田ちあき
イラストレーター・漫画家・京都芸術大学非常勤講師
誰の心の中にもある、鬱屈とした気持ちをカラフルに描く。

国内外問わず展示やイベントを行い、イラストの枠に収まらずコラボカフェ、アパレルデザイン、映画出演、コラムの執筆、コピーライター、バンドへのゲストボーカルなど活動は多岐にわたる。
誰かに喜んでもらえるなら何でもやりたい。

【連載】
「やはり猫にはかなわない」ソニーミュージック es
「原田ちあきの人生劇場」LINE charmmy
「しぶとい女」大和書房

【著書】
「誰にも見つからずに泣いてる君は優しい」大和書房
「おおげんか」シカク出版
「原田ちあきの挙動不審日記」祥伝社 等

【official】https://cchhiiaakkii8.wixsite.com/chiaki
【blog】http://cchhiiaakkii8.blog.jp
【Instagram】cchhiiaakkii9
【X】@cchhiiaakkii
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