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「夜読む日記」

作家をする上で忘れたくないこと

コロナ禍に入る前は割と精力的にいろんなイベントをしていた。例えば展示だったりコラボカフェだったり。

それで会場まで足を運んで、来てくれる人たちの顔を見るのが好きだった。

私はイラストレーターなのでイラストを発表しても生の反応を直接見るということがなかなかできない。

なのでイベントごとがあると毎回現地に行って「あー、私の絵を見てくれている人って本当にいるんだなぁ」と感動していた。

2020年、日本にコロナがやって来て私生活でもかなりいろいろなことが起こり、心の調子を崩して大好きだった絵が描けなくなってしまった。

私の絵は暗いし、嫌味なことも言っているし、そんな絵をこんなにピリピリになってしまった世に放流して、誰かが嫌な思いをしたらどうしよう、傷つけてしまうかもなあなんてモヤモヤしてどうしたって指が動かない。

放っておいても絵を描いていた自分が、お仕事以外でしか絵を描かなくなってしまった。

コロナ禍で絵を発表する場もないので自然とイベントも打たなくなってしまった。

心の調子を崩したことで、何度も「死んじゃったほうが楽なんじゃないか~?」「全部やめて就活とかしようかな」なんて思ったりなんかもした。超好きだったSNSもなんだか自分の発信に価値がない気がして見れなくなってしまって、ログインしなくなった。

以前当たり前にできていたことができなくなってしまうということはとても苦しい。自分だけ時がとまってしまったような、自分以外はみんな上手くいっているような気がしてとても焦っていた。誰にでもなく、でもみんなに「置いていかないで」と常に思っていた。

この頃はとにかく頭を休めようと思って、近所をひたすら散策して気を散らせたり、ゲームをしてみたりもしたなあ。

頭では何も考えずに休むといいってわかってるのにね~、何も考えないなんて無理だよね~なんか本当にこの時期は、言い表せないんだけどもう強烈に苦しかった。

コロナ禍が明ける直前子供が産まれて、本当に嬉しかったけどここから絵を描ける自分に戻れるのかも同じぐらい不安だった。

不安で不安でとにかく何かしなくちゃと思い、のたうち回るように絵を描いて東京で個展を開くことにした。普段ずっと書いていた女の子を描いた絵を描くことは諦めて、ずっと書いてみたかったお化けの絵をたくさん描いた。

きっと誰も見に来ないだろうなと告知を打つと、自分の想像した以上にたくさんの人が来てくれて、ありがたいことに絵も完売した。

産後すぐだった為体調がすぐれず、大阪でその様子を見守っていたが、この世にいる誰かが私の絵を見てくれているという事実が嬉しくて嬉しくて家の中でバタバタ踊った。

私の絵を、私の事を覚えていてくれた人がこの世界に存在していたのだ。

私が女の子の絵を描けなくなっても受け入れて、わざわざ電車や足を使って会場に来てくれた人がいたのだ。嬉しい。本当に嬉しかった。

一度個展をすると別の会場からも「うちでも個展をしませんか」「似顔絵イベントをやってみませんか」「サイン会をしませんか」「トークショーに出てくれませんか」とぽつぽつと声をかけていただくようになった。

数年間人前に出なかった自分に会いに来てくれる人はいるのだろうか?なんて失礼なことを思いながらも、その連絡自体が嬉しくて声をかけてくれたお仕事を全て受けた。

イベントに出てみると、初めて会いに来てくれた人、そのイベントで初めて私を知ってわざわざ来てくれた人、遠くから来てくれた人、いつも会いに来てくれていた人、〇年振りですと言ってくれる人、いろんな人が会いに来てくれた。

久しぶりに会う人たちは「自分の事を覚えていてくれたんですね」って言ってくれて、でもそれは私も同じことを思っていたんだよ。絵が描けない間、本当に私はずっとみんなの事を考えていたんだよ。

どれだけ画面越しに私の絵や文章を見てくれている、そして会いに来てくれるあなたたちに救われている事だろう。

私はね、誰かが私の絵を知ったり、手に取ってくれたり、会いに来てくれたり、逆に苦手だな~と思ってくれたりすること全部を奇跡だと思っているんです。

私の絵で感情を動かしてくれてありがとう。私の絵の事を好きでも嫌いでも。

みんなが頑張って働いたり、お小遣いを貯めて作品を買ってくれること、休日や休み時間の隙を使って会いに来てくれること、好きな服を見せてくれること、会えなくてもみんなの大切な時間を使ってDMやリプライをくれる事、こうしてコラムを読みに来てくれること、その全てがあたりまえじゃないって思っているんだよ。

私の絵を今も覚えていてくれている人、昔好きだったなって思い出になっている人、もう私なんて忘れてしまった人、私の絵を知ってくれて、見てくれてありがとう。

会えない間にさ、色々あったよね。私もあったよ。

あ~、私、生きていてよかった。みんなとまた会えたから。

これからも色んなことが自分の人生にも、みんなの人生にも起きて、変化し続けていくと思うけど、私はずっとこんな感じの絵を描いて、ずっとここにいたいなって思います。

だから私の絵を見たいな~って気分になった時はいつでも思い出してほしいなあ。

おめでたい絵でもハッピーになる絵でもないけどさ。でも人生の中にはそういうものが必要な瞬間があると思うんだよね。

そうやってまた生きて生きて、生き抜いたその先で会いたいです。会えたらうれしいなあ。 私も生き抜くよ。明日もかわいく。ね。

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ライター紹介

原田ちあき
イラストレーター・漫画家・京都芸術大学非常勤講師
誰の心の中にもある、鬱屈とした気持ちをカラフルに描く。

国内外問わず展示やイベントを行い、イラストの枠に収まらずコラボカフェ、アパレルデザイン、映画出演、コラムの執筆、コピーライター、バンドへのゲストボーカルなど活動は多岐にわたる。
誰かに喜んでもらえるなら何でもやりたい。

【連載】
「やはり猫にはかなわない」ソニーミュージック es
「原田ちあきの人生劇場」LINE charmmy
「しぶとい女」大和書房

【著書】
「誰にも見つからずに泣いてる君は優しい」大和書房
「おおげんか」シカク出版
「原田ちあきの挙動不審日記」祥伝社 等

【official】https://cchhiiaakkii8.wixsite.com/chiaki
【blog】http://cchhiiaakkii8.blog.jp
【Instagram】cchhiiaakkii9
【Twitter】@cchhiiaakkii
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