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「夜読む日記」

恋ってそんなにしなくちゃいけないのかという問いへの私見

先日、私の画集の発売記念のイベントでトークショーをさせていただくことになった。

そのイベントの中、読者の方が質問をくださるというコーナーがあり、その中に「恋って絶対しなければいけないと思いますか?」というものがあった。
これ、私がイラストを描き始めてからDMやメール、リプライなどで定期的に質問を受け、その度にかなりの熱量で回答をさせていただいているのだが、改めてすごく語りたい内容だなと思ったのでこの場を借りて「恋は必要か、必要でないか」を私なりの恋や愛、結婚に対する解釈を交えてお話しさせてほしい。
あくまでも個人の意見なので「そういう考え方もあるのね」ぐらいにお読みいただけると嬉しい。

さて、いつものように長々しい文章になりそうなので結論から書きたいと思うのだが、「恋愛はやりたい人だけやればいい」と思う。
まず人間は動物で、種を繁栄させるために子を残すという使命がDNAに刻み込まれている。

それって自然の摂理だと思うし、生き物としてその欲求があることはごくごく正解で当たり前の事だと思う。その第一歩が恋なのだ。

ただ、それとは反対に恋愛や結婚、子供を残すことに前向きではない、興味が持てない事は不自然で間違いなのかというと、絶対にそうではない。
先程も書いたが、恋愛ってつまりは性欲に結びついていて、それは子孫を繁栄させるためのステップなのだ。
人間の三代欲求は「食欲」「性欲」「睡眠欲」。
私はどうしてもこの3つの中で性欲だけを異常に特別視しすぎてない…?と思ってしまうのだ。
ご飯に興味のない人だっていて、睡眠を取らなくても元気にやれている人がいる。
故に性に興味がない人がいたっておかしくはないはずだ。

ここですこし私の話をするんだけど、私は20歳まで恋愛をした経験が一度もなく、友達の恋人できたラッシュ、結婚したよラッシュを経験した時に「私もこれを経験しなくちゃいけないの〜!?全くできる気がしないんだけど!」と焦りまくっていた。
私にはみんながいとも簡単に好きな人を見つけて、出会って、付き合っているように見えた。
一方私は、小中高とほぼ女友達のみと過ごす人生を送っていたのでまず異性との接し方が全くわからない。
この頃にはいろんな男性と出会う機会は増えた(これは恋をしたくて出会っているわけではなく、社会人になり男性と触れ合う機会が増えたことを指す。)が、自分のことを好きになってくれそうな同性や異性がいるとは思えなかった。
自分のキモい部分は自分が一番知っているのだ。こんな人間を愛せる人間がどこにいるというのだろう。
なんでみんなそんなにホイホイ好きな人を見つけられるんだろう。すごいなあ。

なんだかみんなと同じようにできない自分が欠陥品のように思えたし、この血を脈々と繋いできた先祖やら親にも申し訳ないことをしているのかな?なんて考えて暗くなったりもしていた。
自意識過剰なので周りの目もなんだか気になる。「この歳になって恋したことがないなんて異常だ」って思われているのかな?とかさ。
そもそも若い頃は男性が別の生き物のように見えて苦手だったし、おしゃべりできる自信すらなかった。
恋には興味がある。漫画で読んだこともあるしドラマでも見たことがある。あれが本当に起こるならばさぞかしいいものなのだろうなあ~。
でも、そんな触れ合ったこともない生き物と恋をして関係を築くの、今の私には難易度が高すぎる。そうやって半ばあきらめながら10代を生きていた。

そんな感じでモヤモヤして過ごしていた青春時代だったのだが、私は20歳になって呆気なく初恋を経験することになる。天地がひっくり返った気分だった。
出会いは友達の経営していたお店。彼は5歳年上のバンドマンで、二人きりの時にアコースティックギターなんか弾いてくれちゃったりして、なんかオリジナルの素敵な歌を歌ってくれちゃったりしてさ〜少女漫画みたいな甘ったるい言葉をたくさんかけてくれて、そういうことに一切免疫のなかった私は浮かれに浮かれた。もう浮かれまくったね。二人の漫画とかも描いちゃったしさ。まさかこんな自分が恋するなんて!

この時私が理解したことは、私は今まで自分が好きになれる人に出会っていなかっただけじゃないかって事。
勘違いをしていたのだが、男と女が一対一で同じ空間にいるだけで恋が始まる訳ではないのだ。よく考えたら当たり前だよね。何でも適当な年齢があるし、適切な時期がある。
適齢期っていう縛りがあるからってみんながみんな同じ年齢で恋して、結婚して、出産して…なんてあり得るわけない。それこそ不自然だよ。
つまり私は運命の人にまだ出会っていなかっただけだったのだ。

まあそのあと普通に浮気をされて、しかも爆速でフラれたんだけど。
付き合う=結婚するじゃないんだ!付き合うってそんな軽い感じなんだ!衝撃!!!私付き合えばすぐに結婚できると思っていたから!!!

ここで更に気付いたのだが、私は恋自体に興味があるわけではなく、その先の「家族を持つこと」に興味があったみたい。
結婚して、自分の実家とは違う暖かい家庭がどんなものかを体験してみたい。
リラックスできる、緊張しない家に住んでみたい。
子供ができたら遊んだり笑ったり、仲のいい親子というものを体験してみたい。

私は恋に興味があったから恋をしたし、暖かい家庭に興味があったから結婚がしたかった。
ここまでが私の、私だけの恋や愛に対する勝手な感想。

だから私と違ってそういうものに全く興味のわかない人がいても私はおかしいとは思えないんだよね。
だって私の気持ちは私だけのものだし、あなたの心はあなただけのもの。
何が好きで、何が嫌いかなんて誰にも何も言われる筋合いなんかない。

例えばロボットアニメに興味のない人が「これ絶対面白いから」とロボットアニメを勧られて、強制的に視聴させられたとする。
もちろん面白さを自分の中で見出して、うまくハマる人もいるだろうけど、興味が全く持てなくてその時間が苦痛で仕方の人だっているだろう。
これってどちらの感想を持ったとしても異常ではないよね。恋愛だって一緒だよ。

ただ興味は持てなくても、何年後かに急にその作品が自分の人生にビタっとハマる瞬間だってあるかもしれない。
苦手だったものの美味しさにある日突然気づくみたいに、素敵な人に出会って、恋しちゃったりすることもあるかもしれない。
そうなっても全然おかしなことじゃないよ。人間の心はは変わっていくものだから。
世の中が勝手に決めた陳腐な「常識」みたいなことに振り回される必要なんていない。
なにか変化があればその度にちゃんと自分の心のアップデートを受け入れてあげるだけでいいのだ。
なければないで、それがあなたっていうだけ。あなたは不自然でもかけたりもしていないよ。

食べるのが苦手な人だって、眠るのが嫌いな人だって、漫画に興味が持てない人だっている。
だから恋愛っていうカテゴリでそれが起こっていたって何も不思議ではないのだ。
恋に興味がなくたって大丈夫。焦らなくたっていいのよ。
今、自分の興味があることを大切にね。自分だけの人生なんだから。

好きなものを貪欲に楽しんでいこう。私もあなたも。 自分の心を大切に進んでいけばきっと未来はキラキラと輝いているはずだから。

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ライター紹介

原田ちあき
イラストレーター・漫画家・京都芸術大学非常勤講師
誰の心の中にもある、鬱屈とした気持ちをカラフルに描く。

国内外問わず展示やイベントを行い、イラストの枠に収まらずコラボカフェ、アパレルデザイン、映画出演、コラムの執筆、コピーライター、バンドへのゲストボーカルなど活動は多岐にわたる。
誰かに喜んでもらえるなら何でもやりたい。

【連載】
「やはり猫にはかなわない」ソニーミュージック es
「原田ちあきの人生劇場」LINE charmmy
「しぶとい女」大和書房

【著書】
「誰にも見つからずに泣いてる君は優しい」大和書房
「おおげんか」シカク出版
「原田ちあきの挙動不審日記」祥伝社 等

【official】https://cchhiiaakkii8.wixsite.com/chiaki
【blog】http://cchhiiaakkii8.blog.jp
【Instagram】cchhiiaakkii9
【Twitter】@cchhiiaakkii
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