ちょっと気楽になった夜
お悩み相談の痛快なアドバイスが人気。
人生の格言で多くの人の心を動かすDJあおいが
あなたの夜をちょっと気楽にします。
Cコードからやり直す人生
人生も折り返し地点まで来ると、もう新しいことはあまりチャレンジしなくなるんです
その代わりに、人生の伏線回収が始まります
やり残したこと、やらなければきっと後悔することを回収し始めるフェーズですね
ありきたりなところで言えば、いつか読みたいと思って購入した未読の本を読むとか、見逃していた映画を見るとか、死ぬまでに一度は行ってみたかった国に旅行するとか
未回収だったものを引っ掻き集めて、ひとつ、またひとつと『回収済み』にしていく
私も今は伏線回収のフェーズに入っているのですが、実は過去に二度挫折していたものがあるんです
それが、ギター
物心ついた頃から音楽が好きで、テレビよりCDプレイヤーと向き合う時間の方が長かった人生だったのですが、やっぱりリスナーからプレイヤーになりたいじゃないですか
それで中学の頃に親におねだりをしてギターを買ってもらったのですけど、思うように弾けないということで早々に部屋のインテリアになってしまいました
そして次は大学生の頃、やっぱり諦められなくて、アルバイトをして自分でギターを購入しました
初心者にしては高価すぎるギターを、『これだけお高い買い物をしたのだから』という理由が根気になると思ったのでしょうね
でも、それも束の間
またしても部屋のインテリアになってしまったのです
『きっと自分にはプレイヤーとしての才能がないんだ』などと、自分を慰めるように諦めていたのですが、人生伏線回収のフェーズに入り、いの一番に出てきた未回収のものがギターでした
もちろん、今更ロックスターになる気もないし、シンガーソングライターで生計を立てようなどとは思っていません
ただ、一曲だけでいいから、自分の手で好きな曲を弾いてみたい
それができなければ、きっと晩年後悔するだろうと思い立ち、この度またギターを購入しました
弦を張り、チューニングをする
ここまでは難なくできました(チューナーも買ったので)
そしてYouTubeの動画を見ながら初心者レッスンを始めたのですが、ここで過去の記憶が蘇りました
中学の頃、大学生の頃、躓いたところと全く同じ
ギターのいろはのいであるCコードが上手く抑えられない
抑えられたとしても『ジャーン』と綺麗に鳴らない
『ペケペケ』と情けない音を奏でるだけ
スタートの一歩目から躓いているわけですから、『そりゃ自信もなくなるよな』と意気消沈して、恥の上塗りでX(旧Twitter)にぼやいたんです
そうしたら、ものっすごい著名な方がアドバイスをしてくれて、その内容が『ギターのコツは、コードを上手く抑えられないことなど一切気にせずに弾き続けることだよ、上手くなることが目的じゃないよ、楽しむことだよ』というありがたいお言葉をいただきました
そのアドバイスが結構バズっていたので、リプライがツリーになっていて、その中から私のハートのど真ん中を射抜く言葉を見つけました
『バカにならないとギターは弾けないよ』
これは完全に盲点でした
この言葉で、今まで挫折してきた原因がはっきりと見えたのです
私は、教科書通りにやり過ぎていた
まずは綺麗な音を出すことに固執していた
楽しむのはその後だと思い込んでいた
マインドが逆だったんですよね
まずは不細工でもいいので掻き鳴らして楽しむこと
技術は後から着いてくる
まさに『バカにならなければギターは弾けない』という言葉の通り
このマインドに気付かせていただけたことで、過去を越えられたように思えます
もちろん、まだまだ腕前は未熟者ではありますが、今は暇さえあればギターに遊んでもらっています
挫折する気配はありません
今度こそ、自分の好きな曲が一曲弾ける程度まではいけそうな気がします
でもよく考えると、このマインドってギターに限らずなんですよね
大人になると、何かを始める前に『上手くできるかどうか』を先に考えてしまう
失敗したらどうしようとか、みっともない姿を見られたくないとか、費用対効果がどうとか、やたらと理屈を並べて、自分の好奇心にブレーキをかける
子どもの頃は真逆だったはずなんです
逆上がりができなくても公園で何十回もぶら下がっていたし、リコーダーだって最初は騒音みたいな音しか出なかったし、絵だってぐちゃぐちゃだった
それでも『楽しい』が先にあったから、とにかく触り続けていた
あの頃の私は、今思えば相当バカだった
でも、あのバカさがあったから、いろんなことが自然に身についていった
いつの間にか、マインドが逆になっていったのでしょうね
効率とか、正解とか、体裁とか、そんなものばかり気にする『小利口な大人』になってしまった
だから、上手くいかないとすぐにやめる
才能がない、とラベルを貼って撤退する
違うんですよね
才能がないんじゃなくて、バカになる勇気がないだけだった
ギターをジャカジャカ掻き鳴らして、ペケペケ鳴っても笑っていられる厚かましさ
コードが押さえられなくても、ノリで誤魔化す図太さ
それがたぶん、挑戦を続ける人の正体なんだと思います
そう考えたら、人生って急にシンプルになるんですよね
だから今日も、綺麗に鳴らないCコードをジャカジャカと鳴らしています
相変わらず半分はミュート音で、全然ロックスター感はありません
でも、たぶん今が、人生でいちばんギターを楽しめている
伏線回収って、過去の失敗を取り返す作業だと思っていましたが、どうやら違うみたいです
あの頃できなかった自分を、今さら責めるためじゃない
『下手でもいいじゃん』と許してあげる作業なんですよね
回収しているのは未達成の目標じゃなくて
置き去りにしてきた『遊び心』なのかもしれません



