「映画でくつろぐ夜。」 第66夜
知らずに見ても楽しめるけど、
知ればもっと作品が奥深くなる知識、情報を
映画ライター、真魚八重子が解説。
「実は共通の世界観を持っている異なる作品」
「劇伴に使われた楽曲の歌詞とのリンク、ライトモチーフ」
「知っていたらより楽しめる歴史的背景、当時の世相、人物のモデル」
自分には関係なさそうとスルーしていたあのタイトルが、
実はドンピシャかもと興味を持ったり、
また見返してみたくなるような、そんな楽しみ方を提案します。
■■本日の作品■■
『反撥』(64年)
『エクソシスト』(73年)
※配信サービスに付随する視聴料・契約が必要となる場合があります。
ウディ・アレン、ロマン・ポランスキーについて語ること
ウディ・アレンの新作『サン・セバスチャンへ、ようこそ』が来年1月公開になる。
#Me Too問題について、ワインスタインのセクハラを暴いたローナン・ファロー。彼はウディが姉のディランに、幼少時に性的虐待を加えたことを訴えている。彼の母親であるミア・ファローと、再婚相手のウディ・アレンは二人の実子のほかに、養子たちも引き取っていた。そのなかに韓国系のスン・イーがいた。彼女がいまのウディ・アレンの伴侶だ。二人の関係がいつ始まったかは二人にしかわからないが、ミア・ファローがウディの部屋で、ポラロイドで撮影された、ティーンエイジャーのスン・イーのヌード写真を発見した。二人の年齢差は35歳。スン・イーは自分を世間知らずのお嬢さんではなく、自分の意志で付き合ったのだと言っている。
ややこしいのは、ミア・ファローがスン・イーに虐待を加えていたことも証言されているためだ。他の養子たちが、ミアがスン・イーに暴力を振るい、ひどい言葉を吐く場面を目撃していた。ローナン・ファローはウディ・アレンとの再婚後に生まれた子だが、ミア・ファローとフランク・シナトラが離婚して10年が経過しているのに、ローナンは言い訳がきかないほどシナトラそっくりだった。そういったミア・ファローの迷走した行為もあって、ウディ・アレンの件はなんとなくそれ以上進まないままになっている。
ただ、35歳も下の、それも養女を性的対象として見る時点で気持ちが悪いし、#Me Too問題でローナンの果たした功績もあって、ウディの映画には言及しづらい。だが、毎年のように新作を撮っていて、非常に困ってしまうのである。出演している俳優たちはどういった判断で許諾したのか、正直腫物に触るような状態だ。とはいえ、#Me Too問題で改めて注目を浴びるまでは、同じ状況にあったのに、養女との結婚の件には触れずにきたという、自分への嫌悪感に襲われてしまう。
ロマン・ポランスキーも1977年に13歳の少女への強姦容疑がありながら、出廷を拒否してパリへ移住した。以後アメリカには足を踏み入れていない。しかし女性たちのなかから、未成年の頃にポランスキーと性的関係を結んだという証言は続々出ているので、常習犯だった可能性は高いだろう。
ウィリアム・フリードキンの『エクソシスト』(73年)は、ひどい演出法で有名である。役者を緊張させるために、フリードキンは空砲のショットガンを持ち込んで、突然発砲するといった演出法をとっていた。また、本物の神父も起用しているのだが、素人だからなかなかセリフが狙い通りうまく言えるわけがない。すると、フリードキンは突然その神父にビンタをした。ビックリした神父は震えながら芝居をし、それがOKテイクになった。訴えたら俳優たちが勝つような逸話ばかりだ。 でも、こんなひどい逸話があるから封印すべきか? と言われたら、映画史が塗り替わるくらいの出来事だ。フリードキンもポランスキーの映画も、消えてしまっては困る重要さがある。この問題はずっと、ここで悩みに悩んで堂々巡りをしてしまっている。
<オススメの作品>
『反撥』(64年)
『反撥』
監督:ロマン・ポランスキー
出演者:カトリーヌ・ドヌーヴ/イヴォンヌ・フルノー/ジョン・フレイザー/イアン・ヘンドリー/パトリック・ワイマーク
監督はロマン・ポランスキー。主演のカトリーヌ・ドヌーヴが美しい。処女が性的な関心と恐怖に引き裂かれ、狂気に陥っていく姿を描く。徐々におかしくなっていく描写が恐ろしい。また斬新な演出も見られて、ジャパニーズホラーにも影響を与えている。
『エクソシスト』(73年)
『エクソシスト』
監督:ウィリアム・フリードキン
出演者:エレン・バースティン/マックス・フォン・シドー/リー・J・コッブ/ジェイソン・ミラー/リンダ・ブレア
悪魔憑きを描いたホラー映画の金字塔。構成や編集も独特で、非常に恐怖を際立たせる。主演のリンダ・ブレアも非常にませていて、一筋縄ではいかない子だったため、この映画の破廉恥なシーンも堂々とこなした。しかしスタジオで息を白くするために、異常にクーラーをつけたため、ネグリジェ姿のリンダは寒さに震えながらの撮影となった。
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