「映画でくつろぐ夜。」 第119夜
知らずに見ても楽しめるけど、
知ればもっと作品が奥深くなる知識、情報を
映画ライター、真魚八重子が解説。
「実は共通の世界観を持っている異なる作品」
「劇伴に使われた楽曲の歌詞とのリンク、ライトモチーフ」
「知っていたらより楽しめる歴史的背景、当時の世相、人物のモデル」
自分には関係なさそうとスルーしていたあのタイトルが、
実はドンピシャかもと興味を持ったり、
また見返してみたくなるような、そんな楽しみ方を提案します。
■■本日の作品■■
『フランケンシュタインの花嫁』(1935年)
『フランケンシュタイン』(2025年)
※配信サービスに付随する視聴料・契約が必要となる場合があります。
『ブライト!』 女性が名前を獲得するまで
『ロスト・ドーター』で高く評価された俳優マギー・ギレンホールが監督・脚本を手がけた新作が、4月3日から公開となる。フランケンシュタインの怪物の花嫁を描いた『ザ・ブライド!』だ。時代は退廃的な1930年代、彼らはシカゴやNYへとアメリカを横断していく。
冒頭にはメアリー・シェリーが登場する。長らく『フランケンシュタイン』の作家シェリー夫人と呼ばれて、ファーストネームが失われていた女性。この映画ではモンスター(クリスチャン・ベール)が、自分を作った博士の名のフランケンシュタインを名乗っている。そして女性の博士であるユーフォロニウス(アネット・ベニング)の元を訪れ、死体から作った自分にふさわしい妻をねだる。協力することにしたユーフォロニウスは、墓場から新鮮な若い女性の死体(ジェシー・バックリー)を手に入れると、新たな女性のモンスターを作る。ユーフォロニウス博士が死体から作った女も「怪物の花嫁」と呼ばれ、ペネロピ等のファーストネームの様々な案は出るが、呼び名が落ち着くことがない。
韻を踏んだ言葉を叫びつつ暴れ回るブライドと、それに付いて回るフランケンシュタインはボニー&クライドのようだ。ブライドが警察を翻弄し街を破壊していく様を見て、女性たちの間では彼女の手術痕を真似たメイクが、自由に生きる女の象徴的なファッションとなっていく。オリジナルの『フランケンシュタインの花嫁』(1935年)でブライドはほんのわずかな出番で、フランケンシュタインの怪物を見るなり拒絶の悲鳴を上げる。しかし本作でフランケンシュタインと旅路を共にするブライドは、時代に合わせて彼の内面を見るようになっている。
逃亡するブライドたちを追う刑事も、ピーター・サースガードとペネロペ・クルスで、サースガードは途中で引退する。そのため現場の指揮をとるのは女性の刑事であるクルスだ。ユーフォロニウスも刑事も女になり、逃避行を続ける怪物たちは女のブライドが引っ張っていくという、明らかなフェミニズム映画に仕上がっている。
『フランケンシュタイン』の亜流映画はそれなりに作られていて、博士とモンスターが同性ゆえにクィアの要素を孕んだものもある。ビル・コンドン監督による『ゴッド・アンド・モンスター』(98年)は、『フランケンシュタイン』を撮ったジェームズ・ホエール監督がゲイだったことに言及している。また『悪魔のはらわた』(73年)は『フランケンシュタインの花嫁』のリメイクだが、男性モンスターの死体に誤って同性愛者の青年の首を使ってしまうという、クィアの取り入れ方をしている。
そのほかにはコンピューターが得意な男の子が、亡くなった好きな少女の脳にICチップを埋め込んで生き返らす『デッドリー・フレンド』(86年)は、監督のウェス・クレイヴンがやはり上手いなあと思う。日本では川村毅監督の『ラスト・フランケンシュタイン』(91年)が、フランケンシュタイン博士とブライドが肉体関係を持ってしまうのが、いかにもいかがわしくて日本らしかった。また昨年にはギレルモ・デル・トロ監督による『フランケンシュタイン』(25年)のリメイクも作られている。期待が大きかった分、少し真面目過ぎた印象を受けたが……。
<オススメの作品>
『フランケンシュタインの花嫁』(1935年)
『フランケンシュタインの花嫁』
監督:ジェームズ・ホエール
出演者:ボリス・カーロフ/ヴァレリー・ホブソン/エルザ・ランチェスター/コリン・クライヴ
基本的に前作『フランケンシュタイン』と同様のことが続いていく。モンスターの内面は穏やかな男であるにも関わらず、その見た目の恐ろしさで人々は「怪物だ!」と騒ぎ銃を手にして追いかけ回す。花嫁はこめかみからのウェーヴした銀色のメッシュが特徴的だ。この髪型の独創性だけで、僅かな出番ながら映画史に燦然と輝いている。
『フランケンシュタイン』(2025年)
『フランケンシュタイン』
監督:ギレルモ・デル・トロ
出演者:オスカー・アイザック/ジェイコブ・エロルディ/ミア・ゴス/フェリックス・カマラー
原作通り、イギリス人の北極探検隊が北極点に向かう途中、北極海で衰弱した男性を見つけ救助する。それがヴィクター・フランケンシュタイン博士で、彼が語る数奇な人生を隊長ウォルトンが聞くという構成になっている。実験中の怪物が真っ白で生々しい死体のような状態なのがデル・トロらしい美術。
※配信サービスに付随する視聴料・契約が必要となる場合があります。


