「映画でくつろぐ夜。」 第116夜
知らずに見ても楽しめるけど、
知ればもっと作品が奥深くなる知識、情報を
映画ライター、真魚八重子が解説。
「実は共通の世界観を持っている異なる作品」
「劇伴に使われた楽曲の歌詞とのリンク、ライトモチーフ」
「知っていたらより楽しめる歴史的背景、当時の世相、人物のモデル」
自分には関係なさそうとスルーしていたあのタイトルが、
実はドンピシャかもと興味を持ったり、
また見返してみたくなるような、そんな楽しみ方を提案します。
■■本日の作品■■
『沈黙 -サイレンス-』(2016年)
『犬ヶ島』(2018年)
※配信サービスに付随する視聴料・契約が必要となる場合があります。
日本が舞台のハリウッド映画
人気の高い映画レーベルA24の新作、ジョシュ・サフディ監督の『マーティ・シュプリーム 世界をつかめ』が3月13日から公開になる。これまでジョシュとベニーのサフディ兄弟で監督を務めてきたが、今回はジョシュ単独となっている。本作は卓球映画であり、卓球の世界大会が日本で行われるため日本で撮影されたシーンがある。ただ時代が戦争直後というのもあって、少女たちの応援が北朝鮮を思わせるものになっているが……。
日本を舞台にした映画はかなりの本数が作られている。ソフィア・コッポラ監督の『ロスト・イン・トランスレーション』は、少し日本をバカにしている目線もあったが、初老の男性と若い女性が、言葉の通じない国の中で孤独によって共鳴する感性が良かった。逆にリアリティがない作品といえば、マーベルのXメンシリーズの1本である『ウルヴァリン:SAMURAI』を思い出す。新幹線の上でウルヴァリンと対等に戦えるヤクザの強さに笑ってしまった。外国人から見てヤクザはどんな存在に思われているんだろう。
真田広之と渡辺謙がハリウッドに進出した『ラスト サムライ』は素晴らしかった。この作品があってこその、いま評判の高いドラマ『SHOGUN 将軍』が生まれたと言える。『ラスト サムライ』の際に真田広之がとても端正なので、トム・クルーズが「彼は何者なのか」と意識していたという、まことしやかな噂も聞いた。
1955年のサミュエル・フラー監督『東京暗黒街・竹の家』は、もうどういう映画だったかすっかり忘れてしまったが、アメリカ人が想像するフジヤマ、ゲイシャ、ヤクザといった作品だった気がする。この手の映画の筆頭にあがるのが67年制作の『007は二度死ぬ』だろう。浜美枝の白いビキニというサービスショットがあるものの、アクションシーンで男性が吹き替えをしているので、突然ものすごくいかつい体つきになってしまうのだった。
タランティーノの『キル・ビル』2作から、もはや20年以上経過しているかと思うと、年をとる速さに溜息が出てしまうが、サブカルチャーと日本というのは、まだあまり変わっていない気がする。不思議の国、日本のゲイシャがジョシコーセーになり、独特の文化を織りなしている。
2016年のマーティン・スコセッシ監督作『沈黙 -サイレンス-』は、遠藤周作原作である。スコセッシはシネフィルで大量の映画を観ている人だが、村人役のオーディションで塚本晋也監督が並んでいたら、それに気がついたスコセッシが「塚本さん、何してるんです?」と声をかけ、「オーディションに並んでいるんです」と答えたら「とんでもない!そんな必要ありませんよ!」ということになって出演が決定したというのも、すごいことだと思う。塚本監督はみずから主演することが多いので、顔を覚えていても自然とはいえ、やはり塚本晋也の映画を観ていなければ気づかないはずなので、シネフィルは恐ろしい。
日本愛に溢れていた映画は、2018年のウェス・アンダーソン監督作『犬ヶ島』だろう。ストップモーションアニメで、たくさんの個性的な犬たちが登場する。現実の日本とはかけ離れているのだが、関取や四畳半の部屋とか、些細なところにリアリティがあって惚れ惚れしてしまう。
<オススメの作品>
『沈黙 -サイレンス-』(2016年)
『沈黙 -サイレンス-』
監督:マーティン・スコセッシ
原作:遠藤周作
出演者:アンドリュー・ガーフィールド/リーアム・ニーソン/アダム・ドライバー/窪塚洋介/浅野忠信/塚本晋也/イッセー尾形
スコセッシには、1988年に『最後の誘惑』という物議を醸した映画がある。磔刑に処されたイエスの妄想を描いた作品で、イエスを普通の男として捉えた映画だった。『沈黙 -サイレンス-』にも似たイメージがある。神のために信仰者とはいえない態度を取ることは、この2作で長い年月を経ていても変わらない。
『犬ヶ島』(2018年)
『犬ヶ島』
監督:ウェス・アンダーソン
出演者:ブライアン・クランストン/コーユー・ランキン/リーヴ・シュレイバー/エドワード・ノートン/ビル・マーレイ/ジェフ・ゴールドブラム/野村訓市
近未来の日本。メガ崎市で犬インフルエンザが大流行し、犬たちはゴミ処理場「犬ヶ島」に隔離されることになる。小林アタリは愛犬スポッツを捜し出すため、たった1人で小型機を盗んで犬ヶ島へと向かう。声優陣が豪華でブライアン・クランストン、エドワード・ノートン、ビル・マーレイ、ジェフ・ゴールドブラム、ティルダ・スウィントン、スカーレット・ヨハンソン等々。
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