ちょっと気楽になった夜
お悩み相談の痛快なアドバイスが人気。
人生の格言で多くの人の心を動かすDJあおいが
あなたの夜をちょっと気楽にします。
何者でもないのが本当の自分の正体
『彼女』であるためには、『彼氏』という存在が必要で
『妻』であるためには、『夫』という存在が必要で
『親』であるためには、『子供』という存在が必要で
『会社員』であるためには、それを認めてくれる人事部の偉い人や社長さんという存在が必要で
『アイドル』であるためには、アイドルとして応援してくれるファンが必要で
『文筆家』であるためには、仕事を提供してくれる編集さんやそれを読んでくれる読者さんという存在が必要で
『場を盛り上げるムードメーカー』であるためには、それを是としてくれる仲間が必要で
『頼れるリーダー』であるためには、頼ってくれる後輩や同僚が必要で
『自分が何者か』であるためには、自分ではない違う誰かの承認が必ず必要になります。
自分ひとりだけでは何者にもなれないのが人間というものです。
よく『自分探しの旅』と称して一人旅に出掛ける人もいるのですが、その旅でめでたく自分を探し当てた人など見たことがありません。
当たり前ですよね、何者でもないのが本当の自分の正体なのですからね。
人は何者かになりたくて努力を積み重ね、自己実現のために心血を注ぐ生き物であり、それを推奨されている社会でもあります。
そうやって苦労を重ねてやっと『何者なのか』という自分を手に入れていくのが人生のタスクになるわけですが、その手に入れた自分には必ず重責が付随しているんですよね。
彼氏や彼女である責任、妻や夫である責任、社員や社長である責任などなど、手に入れた自分が多ければ多いほど、それぞれに付随した責任が複合的に絡まり合い、自分が自分であるが故にキャパシティをオーバーして、訳もわからずイライラしてみたり、または自己否定で鬱々としてみたり、出口のない思考の迷宮を彷徨うハメになってしまうのだと思います。
学生時代、私の母親がよく言っていた台詞、『今日お母さんは21時で閉店だから』
当時はただ観たいドラマがあるだけなのだろうと思っていたのですが、今思えば『母親』という重責を一旦忘れ、何者でもない本当の自分になって心身共にリフレッシュしたかったのだと思います。
よくよく考えると、心の底からリフレッシュできる瞬間って、『自分が何者であるのか』なんて一切考えていないんです。
その瞬間だけは誰かの恋人でもないし、誰かの妻や夫でもない
誰かに雇用された社会人でもなければ、誰かに必要とされるチームの一員でもない
何者でもない本来の自分になれたとき、人は様々なしがらみから解放されて、一旦気持ちをリセットできるのでしょう。
もちろん『自分は何者なのか』というアイデンティティの拠り所は必要だと思うのですが、『何者でもない自分』という本当の自分も大切にしないと、自分で自分の首を絞めることになってしまい、結局は何者にもなれないような気がします。
せめて一日のタスクを終えた夜くらいは、何者にもならなくてもいいんじゃないですかね。
面倒なことは明日の自分に丸投げでもして、夜は何者でもない自分になりましょう。