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真魚 八重子「映画でくつろぐ夜」

「映画でくつろぐ夜。」 第130夜

知らずに見ても楽しめるけど、
知ればもっと作品が奥深くなる知識、情報を
映画ライター、真魚八重子が解説。

「実は共通の世界観を持っている異なる作品」
「劇伴に使われた楽曲の歌詞とのリンク、ライトモチーフ」
「知っていたらより楽しめる歴史的背景、当時の世相、人物のモデル」

自分には関係なさそうとスルーしていたあのタイトルが、
実はドンピシャかもと興味を持ったり、
また見返してみたくなるような、そんな楽しみ方を提案します。

■■本日の作品■■
『THE 4TH KIND フォース・カインド』(2009年)
『ダークスカイズ』(2013年)

※配信サービスに付随する視聴料・契約が必要となる場合があります。

宇宙人は地球で何がしたいのか?

10月1日から公開になる、スティーヴン・スピルバーグ監督の『ディスクロージャー・デイ』は、またまた地球外生命体に関する映画だ。『未知との遭遇』『E.T.』『宇宙戦争』と、スピルバーグほど宇宙人に魅了されている作家もいないだろう。そしてスピルバーグの描く宇宙人は何を考えているかわからなかったり、友好的だったり、逆に恐ろしく好戦的だったりと、様々なタイプがいた。『ディスクロージャー・デイ』に関してはまだ伏せておくが、日本も含む不安な時代の流れを反映している存在、と言えると思う。

『ディスクロージャー・デイ』と、宇宙人モノで一番メッセージ性が似ている映画は、じつは吉田大八監督の『美しい星』かもしれない。原作は三島由紀夫が唯一残したSF小説だ。本作ではテレビで〈当たらない〉気象予報士として有名な大杉重一郎(リリー・フランキー)が、帰宅途中の車で眩しい光と遭遇して以来、自分を火星人だと思うようになり、テレビの生放送中に地球温暖化の危機を訴え始める。スタッフたちは大騒ぎになるが、意外にもお茶の間では大杉に好意的な声があがっていた。

『美しい星』は何が真実で何が虚構かわからない作りになっている。主人公一家は息子(亀梨和也)も娘(橋本愛)も、それぞれ水星人や金星人だと名乗り始めるが、彼らが体験したことは本当の神秘か妄想か、なんとも言えない。でも地球が水に覆われた美しい惑星であるのは事実であり、それが人間の都合による温暖化によって生態系に変化が現れ、環境破壊が起こるのは確実である。さらに人間の残酷さも含めるのならば、製薬会社のCEO役であるエマ・ストーンが、陰謀論者にアンドロメダ星人だと思われて、拉致され拷問を受けるヨルゴス・ランティモス監督の『ブゴニア』も関連していくだろう。

もっと真正面から宇宙人との接近遭遇を描いたモキュメンタリーが、『THE 4TH KIND フォース・カインド』だ。最初にミラ・ジョヴォヴィッチが出てきて、「わたしはミラ・ジョヴォヴィッチです。アビゲイル・タイラー博士を演じます」と挨拶するのがおかしい。しかし雰囲気は恐ろしく、映画内のタイラー博士は何者かに夫を殺され、患者に催眠療法を施すと、それぞれが同じ戦慄するような経験をしていたことがわかる。それはどうやら「未知の生命体との第四種接近遭遇」らしい。博士の住むアラスカ州ノームでは行方不明者が多数出ており、FBIの来訪回数も2000回を超えるという。しかし、町の警察からはタイラーが患者たちへ治療中に何かを吹き込んだのでは、と疑われる。そしてタイラーの身近でもアブダクションが起こってしまう。

このにわかに信じがたいことだからこそ、タイラーのような被害者である主人公が、世間から加害者として疑われ、社会的信用を無くすことになるのも、宇宙人映画では報われず息苦しい点だ。

『ダークスカイズ』は、主人公のバレット一家の父親ダニエルが失業中で、しょっぱなから経済的に追い詰められている。妻レイシーは不動産を紹介する仕事をしており、思春期のジェシーとまだ幼いサムという2人の息子がいる。ダニエルの面接は失敗し、家のローンの督促状がくる中、家族を不気味な怪現象が襲う。鳥の群れが何百匹も家にぶつかったり、監視カメラを付けると黒い影がサムの部屋に現れたり、また隣人にサムを預けてプールに連れていって貰った際、ダニエルたちには覚えのないあざがサムの全身についていた。彼らはただでさえ怪現象が続いて心労が絶えないなか、愛息子のサムへの虐待の容疑で児相に通報されそうになる。

この2作は宇宙人によるアブダクションを扱った映画だ。エイリアンも正々堂々と現れればいいのに、コソ泥のように夜中に部屋に忍び込み、彼らが現れると磁気が発生して録画しているビデオもノイズで証拠にならなくなる。UFOで人を吸い上げたりする科学技術があるなら、本当は地球の言語の翻訳くらいできるだろう。少なくとも子どもを無断で拉致して返さないというのが横暴すぎる。宇宙人もいい加減、地球の流儀に則って何がしたいのかくらい説明しろと言いたくなるものだ。まあ、宇宙人の存在は信じていないけれど。

<オススメの作品>
『THE 4TH KIND フォース・カインド』(2009年)

『THE 4TH KIND フォース・カインド』

監督:オラントゥンデ・オスサンミ
出演者:ミラ・ジョヴォヴィッチ/ウィル・パットン/ハキーム・ケイ=カジーム/コーリイ・ジョンソン/エンゾ・シレンティ/イライアス・コティーズ/エリック・ローレン

こういう映画ばかり出ているミラ・ジョヴォヴィッチには好感が持てるな~と思う。本作は真実のアビゲイル・タイラー博士とされる、精神的疲弊でゲッソリと面変わりしてしまった女性が登場する。この人のファーストインパクトがすごい。怖すぎる。その後はカウンセリングの間に回していたビデオを、タイラー博士役のミラジョヴォが再現していく。かなり人間関係でも辛辣さが付いて回る作品だ。

『ダークスカイズ』(2013年)

『ダークスカイズ』(2013年)

監督;スコット・スチュワート
出演者:ケリー・ラッセル/ジョシュ・ハミルトン/ダコタ・ゴヨ/J・K・シモンズ

ただでさえ大黒柱の父親が失業中で経済的に苦しい中、突如、宇宙人によるいたずらのような迷惑千万なことが起こり続ける。最初は台所に天井まで積み上げられたグラスの数々。警察は子どもが二人いるので、当然彼らの悪戯が疑われる。しかし不思議な現象が起こるのは家族全員で、レイシーは記憶を喪失して自傷行為をしたり、ダニエルは鼻血が大量に出たりと、いやなことばかり起こる。宇宙人は本当に何がしたいんだろうか。

※配信サービスに付随する視聴料・契約が必要となる場合があります。

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ライター紹介

真魚 八重子
映画ライター
映画評論家。朝日新聞やぴあ、『週刊文春CINEMA!』などで映画に関する原稿を中心に執筆。
著書に『映画系女子がゆく!』(青弓社)、『血とエロスはいとこ同士 エモーショナル・ムーヴィ宣言』(Pヴァイン)等がある。2022年11月2日には初エッセイ『心の壊し方日記』(左右社)が発売。
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